ブツの購入やサービスの契約の話ですが、
「偉い人に決めてもらうから、競合商品を最低3つアイミツ取っといて」
「判断しやすいように比較表を用意しといて」
ということを言う人、そろそろ絶滅するかと思いきや、未だに健在なようです。
もちろん、すべての場面でこれがいけない、というわけではないのですが、
- すでに要件を満たした商品・サービスの存在がわかっている
- それを選んでも特に問題はない(金額的にも許容範囲)
にも関わらず「比較検討も価格交渉もせずに指名買いするのはけしからん」というクチです。
「競合させれば安くなるのにそれをしないのは職務怠慢」だそうですが、
- 今はスピードの時代。「時間」の価値が以前より相対的に高くなってるけど?
- 短期~中期的には人手不足の時代。果たして「(すでに1つある)選択肢を複数に水増しする」業務が、貴重な労働力を投入すべき対象なの?
- 人の「モチベーション」と「判断力」には限りがあるのに?
- 目先のコスト削減のために、かえって最適解を逃す結果にならないの?
であってもなお、それが必要なことなのか?一度よく考えてみるのが良いかと。
複数商品やサービス、あるいは販売業者を競合させると、大体、
- 価格競争できない先と、しない先が脱落する
- 残った先は、大体価格や(表面上の)条件が同レベルになる
という結果になり、それを示された「偉い人」は、
- 根拠のない「勘」やイメージ、雰囲気(「ふいんき」)で選ぶ
- 「選びにくい」と不機嫌になる(酷いと「やり直し」までさせる)
- ときには「お前らが使いやすいのを選んどけ」と言って選択の責務を「放棄」する(「お前らを信用してるから」という脅し文句を添えて)
というアクションをおこしがちです。
「判断」という行為は大変消耗するから、それをできるだけ避けようとするのはある意味当然ですね。
で、残った先のいずれかを選択すればハッピー、かというと…そうでもない。
先に「価格競争をしない先」が脱落する、と書きましたが、信念や明確な根拠をもって価格設定をしている事業者が「本来なら最適解だった」ということがよくあるからです。
ああ、もったいない。
そうでなくても、価格競争に引きずり込まれた「選択肢」のすべての事業者が、何らかの「モチベーション低下」を起こしてます。
さらにそれ以前に、特にエンジニアなどの専門能力を持つ人が業務にあたる場合、
「すでに確実性の高い選択肢が1つあるのだから、余計なインターバルを挟まずにさっさとそれを選んで業務を進めさせてほしい」
と思っていることが多いはず。
そこで余計な時間を使って気分良く業務を進めさせないということは、その人のモチベーションを大きく下げる=アウトプットの品質を大きく下げるリスクを孕むことになります。
「ゆっくり確実に判断してコトを進めるのが良かった時代」は過去のこと。今は「ベストよりベター」でサイクルを速く回す時代です。
確固たる信念を持って時代や流行に乗らないのは良いと思いますが、自分や「偉い人」の判断の正しさに自信が持てないからといって、部下に「入念なお膳立て」をさせるのは、いい加減やめましょう。