先のエントリ、
の最後、
「技術を怖がって楽しくなさそうな上司」の下で働くエンジニアはかわいそうだし実際につらいです。
にツイートで反応してくださった若手エンジニアの方がいらっしゃいましたが、私は世代としてはこの「上司」の側にいますので、ちょっと贔屓(?)して
「実は『上司』のほうがかわいそうでつらいかもしれない」
ということでも書こうかと思います。
主に非ITベースの企業が前提になりますが、元々エンジニアをしていて管理職を任せられるような人は、
- (さらに上にいる)非エンジニアの上司から技術面で厚く信頼されている
ことが多いようです。
「技術もわかるしマネジメント意識もあって自分と話が通じる」となれば、そうなるのも頷けます。
その一方で、
- 新しい技術を追っている時間が取れない(仕事の面でもプライベートの面でもその余裕がない)
状態が長く続くことで、
- 気づいたら10年以上前の技術しか知らない
- でも相変わらず上司からの信頼は厚い
状況に置かれることにもなりがちです。
それで、どうなるかというと、
- 化けの皮がはがれて上司の信頼を損なうのが怖い
ために、
- 自分より技術力がある部下の台頭を恐れる
- 人を採用する場面では(意識的あるいは無意識に)「自分に従順な人間」を求める
となっていきます。
※なお、「直属の上司が元エンジニアでその上の上司や役員が非エンジニア」という関係性の場合、元エンジニアの管理職同士、お互いのつらさがよくわかるので、共依存の関係になることも。
ただ、そのような態度で組織運営をしていると、当然組織の技術力は上がらないので、提供するサービスの品質やリリース速度は上がるどころか徐々に下がっていき、非エンジニアの上司からの信頼も段々と揺らいできます。
ここまでくると、
- 上司に見放されるのが怖い
- 部下が無気力になるのも怖い
- 外部から余計な口出しをされるのも怖い
という、ただつらく苦しい世界でしかありません。
それでも、部下に舐められないように威厳を保たないといけないし、かといってそっぽを向かれても困るので「物分かりの良い上司」も演出しないといけないし、精神的な負荷は計り知れません。
若手エンジニアの立場なら、このような上司の下から逃げる道もまだ広く残されていますが、すでに「上司にオーバーフィッティングしてしまった上司(※それなりの年齢かつ他所で通じない特殊スキルばかり磨いてしまった人)」が、ここでコースチェンジして新たな人生を始めるのは、かなり難易度が高いです。
つまり、「本当にかわいそうでつらいのは上司」なのです。たぶん。
上司をそういう状況に追い込まないために、部下の若手エンジニアができることは、
- 常に空気を読んで上司の言いなりになる
のではなく、
- 技術の習得を会社だけに依存しない(自分で外に出掛けていく)
- 技術についても技術以外についても、「いいものはいい」「よくないものはよくない」という意見を、間違いを恐れず「早い段階で」しっかり伝える
- 1人で戦うのではなく、なるべく複数の若手・中堅クラスの人を巻き込んで議論に持ち込む
ことではないかと思います。
「若い人から学ぶことが多い」というのは、ITの世界に身を置く者(主におじさん)としてはすごく大きなメリットだと(私は)実感しています。
「かわいそうでつらい上司」はそのメリットを享受できないわけなので(自責ではありますが、そう言ってただ突き放すのもかわいそう)、なるべくそうならないよう、若手エンジニアの皆様も協力していただければ、と切に願います。