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名古屋のITインフラお守り係です。ITイベントへの参加記録などを残していきます。

IT訴訟とパブリッククラウド移行

最近、IT絡みの訴訟が話題になっていますが、それについては専門外ということもあって特に語れることはありません。

ただ、そのような話題が出て、ふと心配になったことがあります。

それは、「大規模パブリッククラウド移行案件でCIerが訴訟に巻き込まれて潰れたりしないか」です(まあ、こっちの話も「専門外」の「素人の余計な心配」ですが)。

 

ちょっと前まで、パブリッククラウドといえばWebの新規サービスでの利用が中心でしたが、最近は既存システムの移行案件が増えているようです。

私の勤務先でも、中小規模ですが昨年オンプレ環境からの移行を行いました。

現在も、大手ユーザー企業で大規模な移行案件が進行中、という話をいくつか聞きます。

心配なのは、

パブリッククラウド移行案件で、CIerが従来のSIerと同じ範囲をカバーしてくれるものと『勘違い』したユーザー企業が『債務不履行だ』と言ってCIerを訴え、裁判所も過去のSIer判例を準用してしまう」

ということが起きないか?です。

 

システム移行におけるSIerとCIerの立場とカバー範囲の違いについては、近畿大学の事例がWeb上の記事にも紹介されています。

ascii.jp

(2ページ目へのリンクですみません。)

 

ユーザー企業がきちんと理解して発注すれば問題はないのですが、「SIerは移行に関わることを拒否した。だからCIerになんとか頑張ってほしい」と言って丸投げする事態になるのが怖いです(基本的には受けないはずですが)。

私の勤務先の場合は、SIerがアプリケーションの開発やミドルウェアの構築にノータッチだったこともありSIerにお願いする事項は特になかったのですが、自社開発のアプリケーションやそれを使うのに必要なミドルウェアの知見はユーザーである自社のほうが当然多く持っていたので、ミドルウェアの代わりに使うマネージドサービスの設定なども、CIerに投げることなく基本的には自社で対応しました。

つまり、「CIer主導での移行」にはなりませんでした。

これについては、直接移行に携わった私自身は「ある意味当然のこと」と受け止めているのですが、細かい事情を知らない上層部は「プロのくせに対応が不十分だ」「以前のSIerはもっと頑張ってくれた」という不満を持っているようです。

そういうこともあって、これからパブリッククラウドにシステムを移行するユーザー企業(の上層部や担当者)が、オンプレ時代のSIerと比較して「CIerがまともに動こうとしない」と不満を持つのではないか、ということを危惧しているわけです。

 

もちろん、CIerも「アプリケーションのことは手を出しません」など、「できないものはできない」という「予防線」はしっかり張っています。裁判所も(少額訴訟を扱う簡易裁判所を除いて)「形式的に判定」ではなく「個別事情を考慮」するのが普通なので変な判決は下さないと思いますが、「万が一」ということもあります。CIerも人手不足なので対応に隙が生まれる可能性もあります(というか実際、結構隙だらけです)。「最強の法務部」も持っていないでしょうし。

大手で本業がSIerであるN社やT社ならともかく、資本も人も少ない専業CIerが敗訴すれば、いとも簡単に潰れてしまいそうです。

というか、最終的に敗訴しなくても、戦い続けている間相当の「体力」を裁判に奪われることになり、それが原因で潰れてしまうことも考えられます(エンジニアも「沈むかもしれない泥船」からは逃げたいでしょうし)。

我々「既存のユーザー企業」は、取引先のCIerが潰れてしまうと大騒動になります。

 

「時代の変化についていけない人」はどの世界にも相当数いるはずなので、変なことにならないのを祈るばかりです。