構築中。

名古屋のITインフラお守り係です。ITイベントへの参加記録などを残していきます。

例の訴訟の件

「例の」って何の?という話ですが、freeeがマネーフォワードを特許侵害で訴えた件です。

そのものずばりのタイトルを書くと、間違って検索流入してくる人が増えそうなので、あえてぼかしてみました(かえって間違った流入が増えたらどうしよう…)。

 

提訴がニュースになった時に、freeeの特許がどんなものなのか検索して全文を読んでみました。文中には「MySQL」など馴染みのワードが並んでいたりして、興味深いものがあったのですが…正直な感想は、

「これ、特許として認めていいの?」

でした(freeeの皆様、ごめんなさい)。

というのも、「摘要と仕訳の対応テーブル」や「サジェスト・入力アシスト」、「Web会計ソフト」など、要素技術としては既に世に存在し、ある程度認知されていたものばかりであり、それら自体に「新規性」「進歩性」があるものではなく…もっとも、それらの「組み合わせ」が「容易に思いつかないもの」であれば特許として認められても良いのですが、実際のところ、この組み合わせは、会計ソフト業界や自社でソフト開発会社・部門を抱えている税理士事務所であれば「一度は考えたことがある」と言ってもいいような内容なんですね。

実際、私の勤務先の当時のボスも、freeeが出てくる何年も前から、似たような仕組みについて「これは作れんのか?」ということを何度も言っていましたし(会計ソフトそのものではないですが、もう少し低レベルのものをリリースしてますね…完全な「自動」ではないですし、事務所内での作業負荷低減を目的にしていて、結局「普通に会計ソフトを使ったほうが速い」ということになってお蔵入りしましたけど)。

「後から考えたら当たり前」というよりも、「昔、同じようなことを思いついたけど実行に至らなかった」というイメージではないか、ということです。

弁理士・特許事務所によっては、「特許としては認められづらいので、実用新案として出願したら?」とアドバイスするかもしれないような案件ではないかと(あくまでも素人の意見ですが)。

 

freeeがすごいのは、

「これを実際に形にしてみせた上に、きちんと事業として成立させた」

ところであって…「業界」の既存プレイヤーは、

・一般的な税理士事務所は、既存の会計ソフトのスタイルを「当たり前」のものとして受け入れている

・そのような税理士事務所にとって、スタートアップや(実績のない)個人事業主は、リスクが大きすぎて顧問先として積極的に取り入れづらいので、そのような層にウケそうなソフトの開発にコミットしづらい

というような感じで、「利益を出せる事業にならないだろう」と見ていて手を付けなかった、というのが正直なところではないでしょうか。

もちろん、このように、自ら努力して築き上げたものは保護されるべきだという考えも分かるのですが、それは特許ではない(目的が違う)だろう、と。

 

なので、今回、マネーフォワードが(まだ確定判決ではありませんが)勝訴したことについては、予想通りというか、特に驚きませんでした。

もちろん、特許としては有効なので、マネーフォワードが使っている技術がこれを「侵害している」と認められる可能性はあったわけですが、特許の内容がやや「ざっくり」した「幅広くあてはまりそうな」感じのものだからといって、幅広く侵害を認める、というわけでもなかったということかな?と。

 

もっとも、今回はマネーフォワード側の弁護士が一枚上手だったという感もあります。freeeは今回、機械学習に関する特許の侵害については含めずに提訴し(ある意味freee側の戦略ミス)、マネーフォワード側の出方に合わせて後からそちらも加えようとして却下されていますが、このあたりは「相手の失策を見逃さず、挽回の機会を与えない」ように上手くやったなあ、と感じます(プロにとっては当たり前のことかも)。

最初からこれらを合わせて提訴していたとしたら、結果はどうなっていたのかわかりません。

裁判の論点も、freee側が主張したかったポイントから、マネーフォワード側がうまくずらすことに成功したような印象があります。

といっても、マネーフォワード側がずるい、という話ではなくて、裁判で争う以上当然のことだと思います。

愛知県美術館「大エルミタージュ美術館展」(7/25)

今日は休日出勤の振替で2ヶ所通院してきましたが、2ヶ所目の名古屋市内のクリニックから帰るときにちょうど豪雨に襲われたので、雨宿りついでに「大エルミタージュ美術館展」を見てきました。

www.ctv.co.jp

ロマノフ王朝、黄金期のコレクションが集結」ということで、16~18世紀の巨匠たちの名画、85点が展示されています。

私自身は、特に海外の絵画についてあまり詳しくないので、多くは(というよりほとんど何も)語れないのですが、夏休みとはいえ平日の午後、豪雨の最中で館内は非常に空いていて、走り回る子供もおらず、ゆっくり静かに鑑賞することができました。

個人的には人物画よりも風景画のほうが好きですが、数は多くないとはいえ風景画も何点かあって良かったです(チラシには1点も出ていないですが)。

 

出口に置いてあったパネルと又リョーシカ?です。

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ちょっとブレてしまいました。

 

引き続きコレクション展(常設)を見て、終わったころにちょうど雨が小降りになっていました。

Real World HTTP、お勧めなのですが…

以前、本の紹介でも書いた「Real World HTTP」ですが、書店では平積みになっていたり棚にも表紙が見えるように陳列されていたり、また、オライリーの直販サイトでもよく売れているようですね。

hmatsu47.hatenablog.com

で、身の周りの人にも勧めているのですが…誰も読もうとしません。

Web開発で飯を食っているのに…大丈夫か。

 

「物事を知らない」原因には、「知らないことが何なのかを知らない」という側面もあるので、HTTP(Web)について「広く浅く、網羅的に、但し『浅く』とはいっても最低限の『深さ』は確保している」この本は、「これで全てを把握する」ことは無理でも、「何か『知らない』ことを見つけて調べるきっかけ」としてはすごく良い本だと思うのですが。

Cookieの制限や適応範囲、クロスオリジン、TLSでの暗号スイート選定、HSTSなど、「セキュアなWebアプリケーションの開発者として必須」ともいえる事項を全て理解、という以前に「その存在を知っている」アプリケーション開発メンバーが1人もいないという寂しい状況です。

管理職曰く、「我々はそれを学習するレベルにない」とのことですが、「Web(インターネット)の世界がわざわざ自分たちの事情(レベル)に合わせて『やさしく』接してくれる」ことなどありえない話なので、それは理由にならないと思う…。

 

「1人で全てのことを把握する」のは無理でも、「足りない部分を複数のチームメンバーがカバーし合いながら1つずつ潰していく」姿勢は必要だと思うのだけれど。